不妊治療の保険適用が拡大!条件やメリット、費用を徹底解説
2024.02.27
従来の不妊治療は全額自費でしたが、2022年4月から、保険が適用される範囲が拡大することになりました。
これにより、今まで高度な治療に挑戦したかったものの、費用面から断念した方にも選択肢が広がったのです。
本記事では、不妊治療に保険が適用されたことでもたらされるメリットを解説します。
現在、不妊治療を検討中、あるいはより詳しく知りたい方が欲しい情報を凝縮していますので、ぜひご一読ください。
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目次
2022年4月に変更された不妊治療の保険適用の範囲
2022年4月から不妊治療の保険適用の範囲が拡大し、これまで自費だった治療に、健康保険の適用が承認されました。
新しく保険が適用される治療法は以下をご覧ください。
【健康保険が適用される不妊治療の種類】
一般不妊治療 |
・タイミング法 ・排卵誘発法 ・人工授精 |
生殖補助医療 |
・採卵・採精 ・体外受精 ・顕微授精 ・胚凍結保存 ・受精卵・胚培養 ・胚移植 |
不妊治療は、大きく一般不妊治療と生殖補助医療に分けられます。
生殖補助医療とは、卵子と精子、受精卵(胚)を体外で取り扱う高度不妊治療のことを指し、
こうした技術に頼らない治療法を一般不妊治療と言います。
従来は、タイミング法や排卵誘発法といった一部の治療法にしか、健康保険の適用が認められませんでした。
そのため、体外受精や顕微授精などの高度な技術を必要とする治療を受けるには、「特定不妊治療費助成制度」を利用して、助成金を受け取るのが一般的だったのです。
しかし、自治体によっては、人工授精などの特定の治療に助成が適用されず、高額な医療負担がかかるケースも珍しくありませんでした。
また、助成を受けられたとしても、不妊治療の医療費は本人があらかじめ立て替え、後日申請した金額が振り込まれる仕組みだったため、一時的な経済的負担は大きいままでした。
不妊治療の健康保険が適用された今、誰もが平等に治療を受けられ、家庭の経済的負担が軽減されることが期待されます。
次項では、新たに保険適用として追加された治療法を詳しく解説していきます。
人工授精
人工授精とは、女性の排卵時期に合わせて、洗浄濃縮したパートナーの精子を子宮内に注入し授精させる方法です。
自然妊娠の場合は、子宮の手前の膣に精子が排出されますが、人工授精では、精子を子宮内に直接注入するので、卵子と精子の出会う確率が必然的に上がり妊娠しやすくなります。
精子を直接注入したあとの流れは、自然妊娠と同じなので、自然妊娠に一番近い過程の方法と言えます。
体外受精
卵巣から取り出した卵子を、精子と体外で受精させて、培養してできた受精卵を妊娠しやすい時期に子宮に直接移植する治療法を体外受精と言います。
タイミング法や人工授精といったほかの治療法に比べると、さらに高い妊娠率が期待できます。
前述したタイミング法や人工授精で妊娠が成功しなかった方や、卵管性不妊、男性不妊、受精障害、そのほか不妊原因が不明な方が対象者です。
顕微授精
体外受精には、顕微鏡を用いて拡大視しながら、形成が正常で、運動が良好な一匹の精子を卵子に直接注入して、受精を手助けする顕微授精という方法があります。
正常受精率は約80%と報告されていますが、すべての卵子が受精卵として発育できるわけではありません。
男性不妊のなかでも、とりわけ重度の造精機能障害による精子異常の方が、一般の体外受精では結果が期待できない場合に適用となる場合が多いようです。
近年では、前項の体外受精よりもメジャーな治療法になりつつありますが、1992年に確立された歴史が比較的浅い治療法であることを念頭に置きましょう。
不妊治療における保険適用の条件
不妊治療の保険適用の範囲が広がったからと言って、誰もが無条件で治療できるわけではなく、いくつかの条件があります。
保険適用には、患者およびそのパートナーが法律婚または事実婚関係であることが必須です。
事実婚の定義は、「同一世帯」「子を認知予定」「互いに配偶者無し」の3つです。
治療を始めるには、病院に戸籍標本の提出、事実婚の場合はさらに住民票も必要になりますので必ず準備してください。
さらに、治療には年齢制限があり、治療開始時に女性の年齢が43歳未満であれば医療保険が適用されます。
なお、年齢ごとに回数制限の上限は異なり、40歳未満では1子ごとに通算6回、43歳未満では1子ごとに通算3回までです。
不妊治療で保険適用の範囲が広がったメリット
これまでも、特定不妊治療費助成制度による助成はあったものの、不妊治療が長期にわたることや、所得や助成回数の制限により高額な費用を負担するケースがありました。
現在は、保険適用によって自己負担額が3割で済むため、経済的負担が大きく減って不妊治療にチャレンジしやすくなったのはうれしいことですよね。
ここからは、保険適用の具体的なメリットを挙げていきます。
メリット①治療費の自己負担額が軽減される
不妊治療に保険が適用されたことによる最大のメリットは、これまでよりも経済的負担が軽くなることです。
不妊治療の一回あたりの金額は決して安くはありません。
自治体によっては、一部の検査を負担する助成金制度がありますが、治療回数がかさみ、結果的に高額になってしまうケースがありました。
助成金を受け取ったとしても、治療回数が増えるごとに超過分は都度自己負担となり、費用が積み重なっていくからです。
助成金は自治体に申請したのち、おおむね2か月後に承認通知書が発送され、そこからさらに1か月後に振り込まれます。
その結果、一度に個人で立て替える医療費が高く、一時的なものといえど負担が大きかったのです。
現在は、患者側の負担が3割に抑えられるため、費用面で不妊治療をあきらめていた方にも間口が広がりました。
メリット②高額療養費制度の対象になる
長期にわたる不妊治療で、自己負担額が徐々に増えた場合は、「高額療養費制度」によって負担が軽くなることがあります。
高額療養費制度とは、1か月のあいだで入院や外来診療でかかった額が上限に達した場合、既定の額を超過した分が、あとから払い戻される制度です。
上限額は、年齢や所得によって異なりますが、70歳未満で年収が370万~770万円程度の方なら1か月で8万~9万円が目安です。
対象は保険診療のみで、自費診療は対象外となるので注意してください。
不妊治療の保険適用が拡大したことで、人工授精や体外受精も高額療養費制度の対象になり、一定額が手元に戻ってきます。
メリット③民間の医療保険が適用される
民間の医療保険の商品によっては、人工授精や体外受精、顕微授精、胚移植などを行った際に給付金を受け取ることができます。
ただし、給付条件や給付回数上限は約款で定められています。
どのくらいの給付金を受け取れるかは商品によって異なるため、これから保険に加入する場合は、複数の保険を比較して希望に合った商品を選択しましょう。
なお、不妊治療の保障を受けたい場合は、保障開始日に注意してください。
保障は、保障開始後すぐに対象になる商品もあれば、保障開始から一定期間が過ぎるまでは対象外の商品もあるからです。
民間の医療保険の加入を検討する場合は、免責期間の有無を必ず確認してください。
保険適用によって不妊治療にかかる費用はどのくらい安くなる?
不妊治療は、必ずしも初めから高額な費用がかかるわけではありません。
治療が比較的長期間にわたることが多いため、一回ごとの治療費が積み重なり総額が大きくなるのです。
ここまでで、不妊治療が保険適用になり、治療費が大幅に減少したことはおわかりいただけたかと思いますが、具体的にどのくらい安くなるかを知りたい方も多いでしょう。
ここからは、保険が適用されたことにより、従来に比べてどれくらい治療費が安くなるか、不妊治療の種類別に解説していきます。
なお、以下で紹介する費用はすべて自己負担が3割となる場合です。
①人工授精の場合
今まで、保険適用外であった人工授精は、一回あたり約5万円の費用がかかっていましたが、保険が適用されたことにより、1万~2万円程度で受けられるようになりました。
内訳は以下の通りです。
【人工授精の費用の目安】
自費診療の場合 |
保険診療の場合(3割負担) | |
一般不妊管理料 |
– |
750円 |
診察、検査、薬代 |
3万円 |
9,500円 |
人工授精 |
2万円 |
5,460円 |
合計 |
5万円 |
1万5,710円 |
従来の自費診療に比べて、3万5,000円ほど安くなっていることから、人工授精にチャレンジするハードルが低くなりました。
治療回数がかさんだとしても、経済的負担が少なくなったことで、精神的な余裕が生まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
②体外受精の場合
自費診療で一回あたり約70万円と高額な費用がかかっていた体外受精は、保険診療によって3割負担になるため、20万円前後で治療が受けられるようになりました。
体外受精における、自費診療と保険診療の費用の違いは以下の通りです。
卵子を取り出す「採卵」と受精卵を子宮に移植する「移植」で、項目ごとに内訳を分けています。
【体外受精の費用の目安】
自費診療の場合 |
保険診療の場合(3割負担) | ||
採卵 |
生殖補助医療管理料 |
– |
900円 |
診察、検査、薬代 |
7万円 |
3万5,000円 | |
採卵10個 |
20万2,400円 |
3万1,200円 | |
受精(コンベンショナルIVF) |
7万4,800円 |
1万2,600円 | |
培養(胚盤胞5個まで) |
7万5,900円 |
3万7,500円 | |
胚凍結5個 |
13万7,500円 |
2万1,000円 | |
移植 |
生殖補助医療管理料 |
– |
900円 |
診察、検査、薬代 |
5万円 |
1万5,000円 | |
アシステッドハッチング (孵化補助法) |
1万9,800円 |
3,000円 | |
凍結融解移植 |
9万6,800円 |
3万6,000円 | |
合計 |
72万7,200円 |
19万3,100円 |
このように、50万円以上も費用が抑えられたことで、体外受精がさらに身近になり、家庭の経済的負担を減らしてくれることは間違いありません。
不妊治療の保険適用の範囲が広がったことによる注意点
保険が適用されたことによって、不妊治療を受ける大多数の人は自己負担金額が少なくなります。
しかし注意したいのが、保険が認められていない治療法を必要とする人にとっては、負担額がこれまでよりも増えてしまうケースがあるということです。
これまで体外受精と顕微授精にのみ適用されていた「特定不妊治療費助成制度」は、不妊治療が保険適用になったことで廃止されました。
これは、一回の治療につき30万円、排卵をともなわない凍結胚移植および採卵したものの卵子を得られない等で中止した場合は、10万円の給付金が受け取れる制度です。
たとえば、着床不全や不育症の方が必要とする保険適用外の治療法は、今まで助成金制度が利用可能でしたが、制度が廃止されたために、全額実費になります。
これにより、特定不妊治療費助成制度が適用されていたケースのほうが、負担の少なかった人もいるかもしれません。
不妊治療に保険が適用されても、自分が適用となる治療法によっては、助成制度を利用したときよりも負担がはるかに大きくなる可能性があることは覚えておきましょう。
不妊治療の保険適用の範囲拡大によって、挑戦しやすくより身近になったものの、適用には条件がある
今回の記事では、不妊治療の保険適用拡大による変更点やメリットを解説しました。
保険診療の範囲が拡大し、不妊治療に挑戦しやすくなったことで、これを機に検討する方もいらっしゃるでしょう。
さらに、治療の際に独自の給付金を受け取れる民間の保険の商品も登場しています。
商品によって、給付条件やタイミングは異なるため、新規加入をお考えの方は、契約前に保障内容を必ず確認しましょう。
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