生命保険と損害保険は同じ保険でも保障の対象が異なる
2022.03.25
生命保険について理解を深めるためには、損害保険との違いを知っておくことが必要です。また、保険料と保険金の違いなど、専門用語についても正確に理解することが大切になってきます。ここでは、生命保険と損害保険の違いや第三分野の保険などについて解説します。
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目次
生命保険と損害保険について
生命保険と損害保険の特徴は大きく異なります。保険商品に加入する場合、両者の特徴を理解して目的に合ったものを選ぶ必要があります。ここでは、生命保険と損害保険の違いを詳しく解説します。
そもそも損害保険とは
損害保険は、日常生活で遭遇した偶然の事故などで生じた損害を補填する保険です。具体的には、突発的かつ偶然に生じた外来の事故による損害を補償します。ここでいう外来は、保険金支払い義務が生じる事故の原因が被保険者の身体の外にあるものです。つまり、身体の内側から生じる病気などは外来にはあたりません。一方で、自動車事故によるケガなどは外来にあたります。損害保険に分類される代表的な保険商品として、次のものがあげられます。
【損害保険の例】
- 自動車保険
- 火災保険
- 地震保険
- 傷害保険
- 賠償責任保険
いずれも、突発的かつ偶然に生じた外来の事故による損害を補償する保険であることがわかります。
生命保険と損害保険の違い
生命保険と損害保険は、ともに大数の法則と収支相等の原則で成り立っています。大数の法則は偶然に見える出来事でも大量に観察すれば一定の法則があること、収支相等の原則は保険契約者全体でみると保険料の総額と保険金の総額が等しくなるように保険料を算定することを指します。これらをもとに、生命保険と損害保険は成り立っています。
また、損害保険には、給付・反対給付金等の原則と利得禁止の原則という独自の原則もあります。前者はそれぞれがリスクに応じて保険料を負担しなければならない原則、後者は損害保険金の保険金で儲けることを禁止する原則です。
生命保険と損害保険の仕組みには以上の違いがあります。これらの違いが、両保険の特徴に大きな影響を与えています。
保険業法による保険の分類
生命保険と損害保険は、保険業法における位置づけも異なります。保険業法は、保険を第一分野・第二分野・第三分野に分類しています。それぞれの分類は次の通りです。
【保険の分類】
- 第一分野:生命保険
- 第二分野:損害保険
- 第三分野:どちらにも分類されない保険
第一分野は被保険者の生存や死亡に対して保険金を支払う保険、第二分野は偶然の事故によって生じた損害に対して保険金を支払う保険を指します。第一分野は主に生命保険会社、第二分野は主に損害保険会社が取り扱っています。また、第三分野においては生命保険会社・損害保険会社共に扱えます。ちなみに、医療保険・がん保険・介護保障保険・所得補償保険などが第三分野に分類されます。
関連記事:生命保険とは?役割や種類、加入するメリットやデメリット
保険金の対象
ここまで見てきてわかる通り、損害保険と生命保険では保険金支払いの対象(保険会社に保険金支払いの義務が生じる対象)も異なります。保険金支払いの対象を保険事故といいます。損害保険と生命保険の保険事故をまとめると次の通りです。
【保険金支払いの対象】
- 損害保険:突発的かつ偶然生じた事故による損害
- 生命保険:人の生存または死亡
保険金支払の対象が異なるため、両者では保険に加入する目的も異なります。それぞれの特徴をよく理解したうえで加入することが重要です。
保障と補償の違い
生命保険と損害保険では、「ほしょう」の意味も異なります。生命保険で用いられる「ほしょう」は「保障」、損害保険で用いられる「ほしょう」は「補償」です。「保障」にはある状態が保たれるように支え守ること、「補償」には損失を補い償うことなどの意味があります。また、生命保険と損害保険では保険金の支払い方式も異なります。
生命保険は定額払い
生命保険の保険金支払い方式は定額払いです。定額払いは、保険事故が起きたときに予め決めておいた金額を支払うことです。この方式を採用している理由は、人の身体や生命の価値を金銭で表すことはできないからです。したがって、生命保険では保険事故が起きたときに契約時に定めた保険金が支払われます。例えば、契約した金額が1,000万円であれば、被保険者が万が一のときに1,000万円が保険金として支払われるのです。
損害保険は原則実損てん補払い
損害保険の保険金支払い方式は実損てん補払いを原則とします。実損てん補払いは、実際に生じた損失を限度に保険金を支払うことです。保険金で儲けることを禁止する利得禁止の原則に基づき運営されているため、損害保険は実損てん補払いを採用しています。
実損てん補払いを理解するためチェックしておきたいのが、保険価額と保険金額の関係です。保険価額は保険事故が発生したときに生じると予想される損害の最高見積り額、保険金額は保険事故が発生したときに保険会社が支払う保険金の上限額を指します。両者の関係により、損害保険は超過保険・全部保険・一部保険にわかれます。それぞれの概要は次の通りです。
分類 | 概要 |
超過保険 | 保険金額が保険価額を超えている保険。 |
全部保険 | 保険金額と保険価額が等しい保険。 |
一部保険 | 保険金額が保険価額を下回っている保険。 |
超過保険と全部保険は、損害額をすべて補償できます。一部保険は、保険金額と保険価額の割合に応じて保険金が減額されます(比例てん補)。ポイントは、超過保険であっても保険価額を超える保険金は支払われないことです。
保険期間
損害保険と生命保険を比較すると、保険期間にも違いがあります。保険期間は、加入した保険商品の補償・保障を受けられる期間と考えればよいでしょう。具体的な保険期間はケースで異なりますが、損害保険の保険期間は生命保険よりも短い傾向があります。1年程度で保険期間が終了し、引き続き補償を受けたい場合は契約を更新しなければならないものが多いでしょう。損害保険の中には、国内旅行傷害保険や海外旅行傷害保険のように保険期間が数日程度しかないものもあります。生命保険は、長期に及ぶ保険期間を設定しているものがほとんどです。ただし、生命保険の中にも保険期間が短い保険商品はあります。
募集形態の大きな違い
損害保険と生命保険では、募集形態にも違いがあります。損害保険は、保険代理店が保険商品を販売することが一般的です。例えば、カーディーラーで自動車保険に加入するケースなどが挙げられます。対する生命保険は、自社の営業マンが保険商品を販売することが一般的です。勤め先で、生命保険会社の営業マンから保険商品の説明を受けた経験がある方は多いでしょう。インターネットの普及により販売チャネルは増えていますが、現在でも損害保険は保険代理店、生命保険は自社営業マンが販売の主力を担っています。
税制上の取扱い
損害保険と生命保険では税金の扱いも異なります。損害保険は、その年の1月1日から12月31日までに支払った地震保険料(火災保険とセットで契約)のみ所得控除の対象になります。所得税の控除額は50,000円を上限として地震保険料の全額、住民税の控除額は25,000円を上限として地震保険料の2分の1です。
生命保険は、その年の1月1日から12月31日までに支払った保険料が所得控除の対象になります。所得税・住民税の控除額は、平成23年以前の契約と平成24年以降の契約で異なります。参考に平成24年以降の契約に適用される控除額の限度額を示すと、所得税は一般生命保険料が40,000円、個人年金保険料が40,000円、介護医療保険料が40,000円で合計の限度額が120,000円、住民税は一般生命保険料が28,000円、個人年金保険料が28,000円、介護医療保険料が28,000円で合計の限度額が70,000円となっています。
損害保険の選び方のポイント
ここからは損害保険を選ぶときにチェックしたいポイントを紹介します。
補償の範囲
加入時にチェックしたいのが補償の範囲です。損害保険の中には、備えたいリスクを自分で選択できるものがあります。例えば、自動車保険であれば、車両保険や搭乗者傷害保険、特約などを選択して補償を手厚くできます。補償が手厚いと安心ですが、その分だけ保険料は割高になります。したがって、損害保険では無駄と漏れが発生しないように補償の範囲を設定することが重要です。
保険料
損害保険の保険料は、補償内容のほか保険会社でも異なります。保険会社により保険料算定方法や適用される割引が微妙に異なるからです。補償の範囲を設定したら、複数の損害保険会社から見積もりを取って保険料や補償内容を比較することも重要です。
付帯サービスや特約
付帯サービスや特約も保険商品で異なります。両ポイントとも、ライフスタイルやニーズに合っている損害保険を選ぶうえで重要なポイントです。例えば、自動車保険では、無料で利用できるロードサービスの内容が異なることが少なくありません。商品選びで悩むときは、付帯サービスや特約を比較すると決め手になることがあります。
保険料と保険金の違い
保険には色々な専門用語があり、似ている言葉であっても意味が全く異なるケースがあります。保証と保障、補償はどれも「ほしょう」と読みますが、言葉の意味は全く違ってきます。保険料と保険金も言葉の意味は違います。保険について正確に理解するには、言葉の本当の意味を知っておくことが必要です。
保険料とは、加入者が保険会社に毎月支払うお金のことであり、掛金と呼ばれる場合があります。一方で、保険金は加入者が死亡、高度障害を負った時に保険会社から支給されるお金のことです。
保険料は加入者が保険会社に支払うお金であり、保険金は保険会社が加入者に支払うお金になります。このように、保険料と保険金は全く違う意味になります。
生命保険会社ごとに異なる保険料
生命保険料は、各生命保険会社によって大きく異なります。保証内容に大きな差がなくても、保険料に大きな差がある理由がわからないという方は多いでしょう。その答えは、付加保険料の差です。
一般に、生命保険の保険料は「純保険料」と「付加保険料」の2種類で構成されており、純保険料は保険金や給付金の支払いにあてるお金のことです。これは生保標準生命表をベースに保険料を算出していますので、基本的にどの保険会社にも大差はありません。
一方、付加保険料は、保険会社が運営する上で必要となる経費です。この付加保険料はあらかじめ生命保険の保険料に含まれているため、保険会社によって大きな差が生じるのです。
関連記事:生命保険に毎月いくら払ってる?世代や家族構成、年収別の平均を解説
保険を乗り換る際に気を付けておきたいポイント
今加入している保険から乗り換えたいと考えている方いらっしゃると思います。
その際に気を押さえておきたいポイントがあります。
下記の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
関連記事:保険の乗り換えで生じるメリットと乗り換え時に気を付けたいポイント
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